ついにGoogle社のプロダクトであるGoogleAdManagerの全体トラフィックのうち10%に1stプライスオークションが適用されました。最新のスケジュールによりますと、8月下旬~9月に完全移行という予定となっています。この移行に伴い、Unified pricing rules(統一価格設定ルール)も施行され、各パブリッシャーは今後の動向に目を離せないでしょう。
本記事では、AdomikのCountry Manager,Japanの渡沼さんにインタビューをした内容をご紹介いたします。Adomikは独自フロアプライスのロジックを持ちパブリッシャーの広告収益最大化を支援するプラットフォームをパリ、ロンドン、ニューヨーク、東京の拠点から、グローバルに展開しています。
お話を伺ったのは・・・
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1stプライスオークションとは?
そもそもオークションとは、広告取引市場における広告枠のインプレッション毎に入札を行い、一番高い値をつけた購入者の広告を表示するRTB方式(Real Time Bidding)のことを言います。
従来のオークション方式は2ndプライスオークションが一般的であり、フロアプライス、もしくは2番目に高い入札価格の+1円で落札される仕組みでした。
(例:100円の入札に対してフロアプライスが50円の場合、落札額は51円となる)
これが1stプライスオークションに変わると、最も高かった入札価格がそのまま落札額となります。
(例:100円の入札に対してフロアプライスが50円の場合、落札額は100円となる)
何故このようなオークション方式の変更をGoogleは行うのでしょうか。
1stプライスオークションを早くから採用していた外資系ベンダーなどでは、市場の透明性・公正さを保証するためにこの方式を導入すべきとの声もあがっておりました。
またGoogleのAdManagerを介して行われるオークションの中には2ndプライスオークションと1stプライスオークション、異なるオークション方式が混在するといった状態が生じており、市場の統一を図るためにも今回Googleはオークション方式の変更に動いたのではないかと考えています。
Unified pricing rules(UPR)とは?
1stプライスオークションへの移行と合わせてAdExchange(以下、AdX)のフロアプライス管理のために使用していた従来の「価格設定ルール」に変わる「Unified pricing rules(以下、UPR)」が登場しました。日本語では統一価格設定ルールと言います。
UPRではAdManagerを介して行われる全てのネットワーク取引(AdX、Exchange Bidding、Header Bidding)で統一したフロアプライスを設定し、一元的に管理をすることになります。
尚、AdManager内の1stプライスオークションではUPRのみが適用されることになります。
UPRと従来の価格設定ルールとの大きな変更点は以下となります。
②バイヤーターゲティングは出来ない
③仮想CPMが設定されている非保証型申込情報は、仮想CPMがUPRのフロアプライス以下の場合において配信権利を与えられない
④設定できるルール数は最大200まで
⑤「優先度」が廃止され「設定価格の高い」ルールが適応される
留意しなければいけないこととしては、先にお伝えした通り既に一部の在庫で1stプライスオークションへの移行は始まっており、UPRを設定していないと従来の価格設定ルールが適応されず設定しているフロアプライス以下で買付けされてしまう可能性があります。
(例:ビルボード枠などにおいて、価格設定ルールでオープンオークション匿名のフロアプライスを100円に設定しており、非保証型申込情報を設定してない場合、UPRを設定していない状況では、1stプライスオークションへ移行したimpression分がフロアプライスの100円以下で買われてしまっている可能性があります)
1stプライスオークションへの完全移行前に出来るだけ早めに設定準備を進める必要があるということです。
ここからは上記でお伝えした1stプライスオークション、そしてUPRが実際にどのような影響を与えるのか、Adomikの渡沼さんへ伺った内容をご紹介していきます
1stプライスオークション移行に伴う影響とは?-interview-
1stプライスオークションへの移行はバイヤーとパブリッシャー、双方の市場にどのような影響を与えるとお考えでしょうか?
まずバイヤーへの影響としては、AdXは入札価格が落札価格になることで、一時的に単価が上がる可能性はあります。変更と同時に、今までの落札額(≒フロアプライス)と同価格をバイヤー側が予測してその価格で買付を行うことは難しいといえます。
ただし広告主のバジェットが上がるわけではないので、バイヤー側も2ndプライスオークション時と同じようなオークションでのwin rateを保ちつつ、最適な買付価格(≒フロアプライス)を探る動き(bid shading)を行うと予想されます。
この最適化が進むことで長期的には価格は均されていくのではないかと考えています。AdManager上ではExchangeBidding(以下、EB)やHeaderBidding(以下、HB)など複数のChannelが存在しますが、1stプライスオークション移行の影響はAdX以外にも影響を与える可能性はあります。
パブリッシャーへの影響はどうなるでしょうか?
先ほどお話しした通り、バイヤー側は変更の影響で一時的に入札価格を上げる可能性はありますので、恩恵を受けるパブリッシャーもいるのではないでしょうか。ただし、長期的に見るとbid shadingの動きにより価格は落ち着く可能性が高いとは思います。このとき重要となるのがフロアプライスの運用になるのではないでしょうか。
従来の2ndプライスオークションは落札額の最大化のためにフロアプライスを設定していましたが、1stプライスオークションでは、バイヤー側に安く買わせないために入札単価を落とすバイヤーから収益を守るための最適化と管理が必要になると考えています。
なので、1stプライスオークションに変わることでフロアプライスが不要になるかというとそうではなく、フロアプライスの設定は移行後も変わらず重要であり、なおかつより複雑な運用を求められると思っております。
どのようなフロアプライスの運用が必要になるとお考えでしょうか?
正直、明確な答えは実際に移行が始まってから見えてくるものだとは思いますが、弊社ではもともとAdXのフロアプライス最適化を行うためのロジックを開発してきました。
1stプライスオークションへの移行後はUPRによってフロアプライスを設定しますが、これまでと大きく異なる点として、フロアプライスの設定対象がAdXだけでなくEB、HBなどAdManegerを介して行われる全てのオークションへ影響を与えることです。
このためどれかひとつの影響だけをみてフロアプライスを決めるのではなく、全体への影響をみながら最適なフロアプライスを算出しなければいけないと考えております。
Adomikの今後の展開について-interview-
移行に伴う影響を踏まえて、今後Adomikはどうするのでしょうか?
フロアプライスの運用についての部分で触れましたが、先ずはUPRへの移行、そして移行後のフロアプライスの運用は全パブリッシャーにとって重要になります。
このUPRへの移行をスムーズに行い、複雑化したフロアプライスの運用を実現するため「UPR Translator」を搭載した新たな最適化ツール「Price」を提供する予定です。
これはパブリッシャーが価格設定ルールで既に設定しているフロアプライスを、弊社独自のアルゴリズムでUPRのフロアプライスに自動で変換を行うものです。
UPRではこれまでのオープンオークション匿名が無くなり、ブランドのフロアプライスのみとなるため、ただブランドに設定していたフロアプライスをそのまま移行するのではなく、これまでのデータからブランドと匿名のバランスをみた新しいフロアプライスを算出します。
UPRへの変換が完了した後は、AdXだけでなくEB、HB全てのChannelデータを分析しながらフロアプライスを最適化していくロジックを提供します。
まとめ
①2ndプライスオークションでは落札額=フロアプライス+¥1でしたが、1stプライスオークションでは入札額=落札額になります
②バイヤーターゲティングは出来ません
③匿名のオープンオークションは無くなります
④仮想CPMが設定されている非保証型申込情報は、仮想CPMがUPRのフロアプライス(UFP)以下の場合において配信権利を与えられません
⑤設定できるルール数は最大200までになります
⑥「優先度」が廃止され「設定価格の高い」ルールが適応されます
1stプライスオークションでは落札額=入札額となるため、バイヤー側の買付ロジックも大きく変わると同時にフロアプライスの役割も変わってまいります。このため枠の価値を担保するために適正なフロア調整を行っていくことは引き続き重要だと考えます。
fluctはSSP最古参であり、長年の経験と知見から今回の対応には万全に準備を進めてまいります。またGoogle公式認定パートナー(GCPP)であるため、引き続きGoogle社との情報交換も密に行います。今後も、専門チームによる運用を継続的に行うことで収益最大化をサポートしてまいります。
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