株式会社fluctアプリグロース本部コンサルタントのはなしーこと花島です!
2021年春頃にリリースされるiOS 14.5より、IDFA取得のオプトイン(事前許諾)方式が必須になります。対象はApp Storeでリリースされている全てのアプリで、広告プロモーション、広告を使ったマネタイズに大きな影響が出てくる見込みです。
特に広告マネタイズを行われている多くのアプリでは、IDFAオプトイン必須化となることで、今まで取得できていたIDFAが取れずに広告収益が減少することに頭を悩まされているかと思います。
今回はIDFA取得オプトイン必須化後、IDFA取得率を向上させるために有効と考えられる、「カスタムダイアログ」を実際に実装されストア申請した事例や実際にATTダイアログを実装された際の許諾率などをディベロッパーさまにお伺いしましたのでご紹介します。
※この記事は平均6分で読み終わります。
※本記事は2021年3月19日時点の情報を元に執筆しています。
IDFAオプトインの影響
iOS14.5IDFAの取得率が低下する予想、また取得率低下はすでに始まっているかも・・・
iOS14.4以前では許諾なしでIDFAが取得できています。iOS14.5以降IDFAオプトイン必須化になることで、IDFAの取得率が低下することが想定されます。
adjustの記事ではオンボーディングフロー内で自然にATTを表示した場合に、「オプトイン率は65%」と述べらております。
また、オプトイン必須化とは別に、AppsFlyerの記事では「iOS14からはIDFAを取得できないカテゴリに「制限付き」が増え、18%のデバイスがこれに当たる」との情報がありました。「制限付き」カテゴリはユーザー年齢が13歳未満などの理由によってカテゴライズされ、すでに公開中のiOS14.0 以降で施行されています。これによってすでに多くのアプリでIDFA取得率が低下していると考えられます。
カスタムダイアログとは?
=ATTの前に表示する媒体社独自のダイアログ
Appleから2021年春先からIDFAを取得する際に、オプトインを必須化にするとのアナウンスがありました。
今後IDFAオプトインの際にダイアログを表示するために利用しなくてはならないのがATT(AppTrackingTransparency)フレームワークです。
しかし、ATTではダイアログフォーマットや文言のカスタムをできる範囲が少なく、ユーザーに利用用途や目的を正しく伝えることが難しい状況です。
そこで解決策として注目を浴びているのが、カスタムダイアログです。ATTの事前に表示し、IDFAの利用用途を説明することで許諾率の向上や、ユーザーの不安を取り除く効果があるのではと考えられます。
カスタムダイアログはAppleからフレームワークなどは提供されていないため、開発者様側でご実装いただく必要があります。ですが、Googleからはすでに、ファンディング チョイスのコンポーネントというメッセージダイアログを表示する機能が提供されています。
実際にストア申請した事例とその結果
カスタムダイアログの問題でリジェクト、文言の修正後にストア申請が通った事例のご紹介
※本事例は大興産業株式会社の森山様にご協力いただき、『消費税++』の事例を元に執筆いたしました。
※本内容はあくまで一例ですので、このようにしたら審査が通ると保証するものではありませんことをあらかじめご了承ください。
左:①20201年3月3日ストア申請時のカスタムダイアログ(リジェクトされてしまったカスタムダイアログの事例)
右:②20201年3月4日ストア申請時のカスタムダイアログ(申請が通った時のカスタムダイアログの事例)
左上①のカスタムダイアログを実装したアプリをストア申請したところ、Appleからからリジェクトされてしまいました。
AppleからはApp Store Review Guidelines: 5.1.1 (iv)に違反するとの指摘があったため、カスタムダイアログの文言の修正を行っていただき、見事申請が通りました。
(iv)アクセス:Appでは、ユーザーのアクセス許可設定を尊重する必要があります。不要なデータアクセスに同意するようユーザーを誘導したり、だましたり、強制したりすることはできません。たとえば、ソーシャルネットワークに写真を投稿できるAppで、マイクへのアクセスに同意しなければ写真をアップロードできない仕様とすることは許可されません。可能であれば、アクセスに同意しないユーザー向けに別の方法を用意してください。たとえば、位置情報の共有に同意しないユーザーには、住所を手動で入力できる機能を用意することができます。
引用:App Store Review Guidelines: 5.1.1 (iv)
カスタムダイアログの実装自体は、AppleのFAQで【追跡許可プロンプトを表示する前に、追跡許可が必要な理由をユーザーに説明できますか?】に対して【はい】とありますので設置自体は問題がないのではと考えております。
トラッキングの許可を求める画面を表示する前に、トラッキングを許可してほしい理由をユーザーに説明することはできますか?はい。データの使用方法を明確に説明する限りは許容されます。「App Store Reviewガイドライン」の5.1.1(iv)の規定により、Appではユーザーのアクセス許可設定を尊重する必要があります。不要なデータアクセスに同意するようユーザーを誘導したり、だましたり、強制したりすることはできません。
引用:ユーザーのプライバシーとデータの使用 – App Store – Apple Developer
※重ね重ねですがあくまで一例です。アプリや指摘内容によって対応は異なりますので、申請が通ることを保証するものではございません。
変更したテキスト
変更前
皆さまの興味・関心に合わせた広告えお表示するために、消費税++が許可を求めています
このアプリは広告の収益に支えられています。今後も皆さまの興味・関心に合わせて広告内容を最適化するには、次の画面で「トラッキングを許可」をタップしてください。「次へ」
変更後
消費税++がアプリとwebサイトのアクティビティの利用を許可しますか?
これにより、消費税++で最適な広告が表示されます。次に表示されるポップアップで選択してください。(許可しなくてもアプリの全ての機能は利用可能です)
「次へ」
カスタムダイアログ実装時のワンポイントアドバイス
機能制限や報酬付与は違反と考えられる
前述のFAQで【同意することで機能をゲートすること、インセンティブを付与すること】に対しては【いいえ】とありますので、機能制限や報酬付与は違反と考えております。
カスタムダイアログで「トラッキングを許可しない」を選択された場合、ATTのタイミングを様子見する
ATTの表示は1アプリに1ユーザー1度限りです。カスタムダイアログには回数制限や、すぐ後にATTを表示しなければいけないわけではございませんので、IDFA取得を許可してくれるかのアンケートを取得し「許可する」を押したユーザーにのみそのままATTを表示し、「許可しない」の場合ATTをすぐには表示しない、ないしは定期的にカスタムダイアログを表示し「許可する」を押したタイミングでATTを表示することも有効ではないかと思われます。
※実装の際は必ずFAQやレビューガイドラインを熟読いただき違反がないか確認されることをおすすめいたします。
大興産業株式会社の森山様からのコメント
リジェクトのメッセージが届いた際はどういったお気持ちでしたでしょうか?
リジェクトされた時は「次の画面で 「トラッキングを許可」
をタップしてください」という文言が少しやりすぎてしまったのかと思い当たり、すぐに修正作業に当たりました。
正直「他のアプリで「トラッキング許可を押してください」と書いてある事例も目にしたのになぜうちのアプリはリジェクトされるの?」という気持ちもありましたが、「やはり審査の担当者次第だなあ」と気持ちを切り替えることにしました。
リジェクト時のAppleからのメッセージを見た時に、私には【カスタムダイアログ自体削除しなくてはならない】というようにも、【ATTの前にデータへのアクセスを要求している理由についての説明をしても良い】というようにも読み取れました。
そのため必要な対応がカスタムダイアログの削除なのか、それとも文言の修正を行えば良いのか明確でなく対応には迷ってしまいました。
そのためfluct担当者(花島)にも内容を共有し意見を求めました。そちらの意見も参考にしつつ、ネットの他社実装事例などもいくつか確認の上、文言の修正を加えて翌日に申請し、すぐに申請が通り安心しました。
無事申請が通りよかったです!
差し支えなければATTダイアログ実装後の反応についてもお伺いしたいのですが、ユーザーのトラッキング許可率は何%程度でしたでしょうか?
『消費税++』でATTを表示した場合のユーザーのトラッキング許諾率は53% 、『CopyCenter2』では許諾率は37%程度となっております。どちらもほぼ同じタイミングでリリースし、3/10〜3/17の8日間で比較しました。
*許可数は「iOS ATT chose consent」、
*拒否数は「iOS ATT chose no consent」として計算
アプリによって許諾率は大きく違う結果となりました。
こちらの差についてはいろいろ理由は考えられるのですが、いずれにしてもアプリによってこんなにも差があるのだなあ、と感じました。
確かに同じツール系アプリでも大きな違いがありますね。貴重なデータをありがとうございます!
最後にfluctのiOS14対応についてコメントをいただけますでしょうか?
今般のATT対応に関しては、昨年の段階で一度延期となったこともあり、いつ対応するのがベストなのか正直混乱した時期がありました。
今回、fluctさんはWebの記事やウェビナーの開催等を通じて「すべきこと」の大枠を整理してくださり、情勢を把握するのに非常に助かりました。また、適切なタイミングでSKAdNetwork IDの設定等を促すメールも流してくださるのでそれも有り難かったです。
最終的にApp Storeの審査でリジェクトされた際の対応に関しても個別にアドバイスをいただけたので、どう修正するべきかの迷いも吹っ切れた部分がありました。
個人開発者または少人数チームの開発会社だと、フランクに相談する相手もいなかったりしてこの手の対応では頭を悩ませることが多いと思いますが、一連のiOS14対応に関してきめ細やかな情報共有をしていただいたおかげで比較的スムーズに事を運べたと考えています。
森山様、ありがとうございます!iOS14にお役に立てたようで大変嬉しいです…!これからも有益な情報発信、サポートができますよう精進してまいります。
今回ご協力いただいた大興産業株式会社さんは、軽減税率も簡単に計算できてお買い物に便利な『消費税++』や、ウィジェットやSiriショートカットに対応したコピペ管理アプリ『CopyCenter2』など、生活を便利にするアプリを多数開発されている大分の会社です。ぜひアプリをダウンロードしてみてください!
まとめ
いかがでしたでしょうか?
カスタムダイアログやATTの実装については、具体的な文言などのルールは定時されておりませんので、今後も状況を見て改善や施策が必要となりそうです。
ですが今回お伝えしました、ユーザーの選択を第一に考え強制する事のない文言はAppleのプライバシーポリシーにも則っており、有効なものかと思えますのでぜひ心がけていただければと思います。
fluctでは iOS 14 について以下のような情報発信やサポートを行なっております。
- ウェビナー開催
- (ウェビナー参加者様限定)Face Bookグループでの情報発信
- fluct magazineでの情報発信
- メールでの更新情報の発信
- コンサルによる対応アドバイスや事例共有
- SKAdNetwork ID一覧の公開
- FluctSDKが収集するデータの公開 etc……
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