2022年には300億円近くの市場規模が予想される、近年注目の広告配信フォーマット「動画リワード広告」。動画リワードを導入する際、インセンティブの設定や導線設計など、活用方法についてお悩みの方は多いのではないでしょうか?
今回は、大人気マンガアプリ「マンガZERO」を運営される株式会社Nagisa様にお伺いし、マンガアプリならではの動画リワード広告活用事例について、お話をお伺いました!
お話を伺ったのは・・・
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まずは御社の事業内容について教えて下さい。
弊社は「構想はいつも実現を待っている」というミッションのもと、「世界をよりよく、面白く」を意識しながら、その時々世の中に必要とされているサービスを展開しています。
主にマンガ事業、ライブ配信事業、ゲーム事業など、様々なアプリの企画、開発を行なっています。
アプリの総ダウンロード数は4000万DL、主軸の「マンガZERO」のダウンロード数は600万DLを超えました。
なぜマンガアプリを事業の主軸にしようと思われたのですか?
マンガZEROが2015年にリリースされたのですが、当時から電子書籍マーケットが伸びていくであろうという展望が見えていた事が大きな理由ですね。
あとマンガって1年に数百の作品が出る中で、本当は良い作品なのに埋もれてしまう作品がたくさんあると思うんです。
出版社様、作者樣、ユーザー様にとってそういうマンガを発掘する、発信するっていうのは、双方にとってもWin-Winな関係が築けると思い、「マンガZERO」を開発しました。
数多いマンガアプリがある中、「マンガZERO」の強みは何ですか?
主に2つあります。
ひとつは無課金でも読めるマンガの量が多い事で、アプリ内でもそれを前面に押し出しています。1日あたり無料で8話(約1巻分)読めるチケットをユーザーに配布し、動画リワード広告のインセンティブによって、さらに読める量が増えるのがシンプルなウリです。
もうひとつは、多くの作品の中からより良い作品を掲載させていただいている点。これはいろいろな出版者様とお取引が出来ているからこその強みです。
「マンガZERO」で、主に意識している事は何ですか?
ユーザー、出版社様、そして、作家様がみんなwin-winな関係を築けるサービスにすることです。そのために、出版社様や編集者と打ち合わせしながら、膨大なデータを生かして面白い作品は何か、ユーザーが出会う1作品目は何か、という点を分析し、取り組んでいます。また、作家様には得られた収益を適切に還元するということもそうですが、マンガZEROは直近に出版された作品だけではなく、過去作品にもフォーカスしながら、再度ユーザーに読んでいただけるような体験の工夫や仕組みづくりも意識しています。
体験の工夫でいうと、例えばUI・UXについてはどんな事を意識して設計していますか?
データを見たうえで設計を決めています。
例えば、ユーザーにオススメ作品をレコメンドする機能があるのですが、オススメ作品の選定は、作品の閲覧数、ユーザーのチケット消費率等を分析し、クリエイティブとして何を出せば新規ユーザーに読んでもらえるのかを、常に考えていますね。
オススメ作品の選定方法は、いろいろ試しました。今までのデータを基に最適なマンガをトップバナーに配置する、ランキングや新着情報を設けてユーザーにほかの作品も読んでもらう、通常スマホで縦向きでチュートリアルに表示するクリエイティブを横向きでも読める様にしてみる、等です。新規ユーザーには、ひとつの作品を読み終えたあとはアプリを開かない方もいらっしゃるのですが、書店みたいに平積みにされている商品って手に取りたくなるじゃないですか。それと同じように継続率向上を見据えたUI/UXは今でも心がけています。結局ユーザーの行動は漫画を見るというのが大前提で、そこにより面白い漫画があるか、趣味嗜好に合うマンガがあるかが継続率につながると思います。
新規流入施策についてはいかがでしょう?
流入については、ASO対策、SNS対策、広告出稿など様々ですね。
「マンガZERO」の広告を配信するのに適した媒体の選定から、効率を求めて様々な広告(事業者、フォーマット)を試しながら流入の拡大を行なっております。また、自社で広告出稿用のクリエイティブも作っています。インハウス化のメリットはスピード感が早いということ、そして「マンガZERO」のデータを基にクリエイティブを作成することが出来る事です。また何より、デザイナーが事業を、マンガを知っているからこそお互いで議論しながら制作できることも強みかなと感じでいます。
「ユーザーの読書体験を向上する」事で、継続率向上にも繋がりそうですね。そういう意味で、動画リワード広告視聴でユーザーに付与されるインセンティブも深く関わると思うのですが、いかがでしょう?
2018年末ごろ、動画リワード広告の導線と、インセンティブ設計を途中で変更したのですが、それがユーザーの読書体験を向上するうえで良い方向に繋がりました。
マンガZEROでは現在どのようなインセンティブがありますか?
マンガZEROの作品を読むために必要なのは、チケットとコインです。
チケットは無料で配布されるチケットと、動画リワードのインセンティブで付与されるプレミアムチケットの2種類があります。コインは、課金でしか読めないコンテンツを読めるアプリ内通貨です。
動画リワード導線のインセンティブを変更されたそうですが、どのように変更されましたか?
コインではなくプレミアムチケットの配布に変えました。
動画リワード導入当初、設定していたインセンティブはコインで、動画リワードを見たらコインを付与するような形でした。ただこれだと、課金率もオファーウォールもかなり低下してしまいました。ユーザーとしては、1日に見れる話数が少なかったことが要因です。2018年の末ごろにトライアルとして今の施策を試してみたんです。現在はインセンティブを、コインではなくプレミアムチケットの配布に変えました。本来課金しなければ見れないコインの所もプレミアムチケットでも見れる様にインセンティブの設定を見直しました。
動画リワード設計の変更前と後で、広告収益、ARPPU、リテンションにどのような変化がありましたか?
ユーザーの広告視聴回数が逆に増えたんですよ。ユーザーのメリットがあがったことが大きな要因で、伴って課金率も増えたんですよね。
動画リワードを導入したことで、広告収益が上がって、自ずとARPPUも上がりました。そもそも、一番初めに動画リワードを導入した目的が、収益軸を増やしたい!だったので、結果的に大成功でしたね。
ユーザーのリテンションはどのように変わりましたか?
動画リワードの導入、インセンティブの変更を境に、今年と去年の数か月ごとを比べてみたときに継続率は上がっています。丁度その時期に、動画リワードとマンガの選定などをブラッシュアップしたこともあるので、相乗効果で良い影響はあったのかなと思いますね。ただ、やはりインセンティブを変えたとしても、そもそも読みたいマンガがあるか無いか、がユーザーにとって一番だと思います。
ジヘンという編集部の存在も貴社にとって大きな存在なんですね。
はい、ジヘンの存在がかなり大きいです。ジヘンは、アプリ発の本格的青年誌編集部です。発足して2年経ちましたが、今は、ジヘンが作家さんや出版社さんに対して、かなり浸透してきました。
発足当初は書いてくれる作家さんもいない、編集者もいないという状態でした。ですが、今は、IT企業だけれども、編集部としての古き良き文化を守ってくれているという嬉しいお声を頂きます。また、大手出版社様がジヘンから単行本を出してくれたり、ジヘン主催の新人賞という作家さん向けのイベントの応募人数もかなり増えてきているので、これから先どんどん新陳代謝を上げて取り組んでいきたいなって思ってますね。
ヒット作を生み出すのって、やはり難しいんですか?
簡単ではないですが、私が思うのは ”良い作家さんと良い編集者の掛け算” で生まれるんだと思います。マンガの制作は、作家さんにどれだけ才能があっても、編集者が良くないとだめなのです。編集者が必要なのは、話毎の切り方、次の話が見たくなるようなタイミング、話の展開等を言語化していく能力です。
作家さんの母数が少なければ、良い編集者がいても、とびぬけた作品は難しい。逆にS級の作家さんがいても編集者がB級であれば作品はそれなりになる。そこがかなり難しい点だと思います。
ただ、自社の編集員のレベルも上がっているので、あとはそこに「マンガZERO」としてのデータが取り込めれば、良い作家さん×良い編集者×データというシナジーも生み出せるのではないかと考えています。
なるほど、「マンガZERO」のデータが生かせるのはすごく大きいですね。
そうですね。
アナログのノウハウが良しとされる文化や、そういった思考の作家さんもいます。一方で、自分で数字を見ながらSNSのフォロワーを作ってブランディングしている作家さんもいます。ジヘンの編集部員でも、データを基にしたマーケティングの観点を求めているので、同じビジョンの共有ができ、高めあえるような関係値を築いていきたいなと思っています。
作品数も多様化していく中で、打率を上げるためにデータは不可欠だと思うので、データとマーケティング観点の活用は今後も意識していきたいと思っています。弊社代表の横山もデータ活用に関してはうるさいので(笑)
今後の会社としてのご展望について教えてください!
主力であるマンガ事業を伸ばすこと。これは今後も変わらない展望になります。
マンガって、ヒットすれば映画、アニメ、ドラマ、グッズ等、IP化が可能な商品じゃないですか。なので先述したデータを用いたマーケティングシナジーをもっと向上させていきながら、今後もマンガ領域に関しては、どんどん伸ばしていきたいと思っています。そのプラットフォームである「マンガZERO」は、まだまだ発展途上です。アプリとしての利便性、読書中の読みやすさ等はまだまだ課題が残っていますし、故にユーザーの読書体験を上げる施策は継続してやっていきたいと思っています。マネタイズとユーザーの利便性が相反する事も多いので、そこはカバーしていきたいです。基本はユーザーファーストを考慮した設計、更に動画リワード等の新しい収益源を作りたいです。